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小説「無人島レストラン(前編)」

小説「無人島レストラン(前編)」

「暇だなぁ」

そう言うと、高岡は大きな欠伸を漏らした。

「夏休みで大学も休みだしな」

山本がめんどくさそうに答える。

「折角の夏休みだしさ、二人でどこか行かねぇ?」

「”どこか”ってどこだよ。だいたい今からじゃどこも人でいっぱいだろ。疲れるだけだっての」

少し間をおいた後に、高岡がなにかを思い出したかのように喋りだす。

「お前さ、”神隠しの島”って知ってるか?」

「神隠し?」

「あぁ、地元の人間なら絶対に近づかない、結構大きな無人島なんだけどさ、島に入った人間が忽然(こつぜん)と消えるらしいんだよ」

「なんだよそれ。どうせどこかの馬鹿が流した、ただの噂だろ」

山本は、高岡の話を遮(さえぎ)るかのように答えた。

「それがさ、そうでもないんだよ」

「どういうことだよ」

山本は、高岡の方へと向き直った。

「そこの島があるとこってのが俺の地元なんだけどさ、うちの親父もそこの島の近くで行方不明になってるんだよ。腕利きの猟師でさ、評判だったのに」

「嵐か、なにかに巻き込まれたんじゃねぇのか?」

「その日は天候も穏やかで、嵐どころか、絶好のコンディションのはずだったんだよ。”ちょっと出かけてくる”って行ったきり、帰ってこなかったよ」

高岡は神妙な面持ちで、少しの間黙り込んでしまう。

「で、その”神隠しの島”ってのに何しに行くんだよ」

「確かめたいんだよ。真相を」

「真相を確かめるってお前・・・」

「頼むよ!親友だろ?俺達」

懇願するような目で、山本の目を見つめる。

「分かったよ。どうせ暇だしな。肝試しと思えば、なんだか面白そうだし」

「恩にきるよ!心の友よ!!」

山本の体を両手で強く抱きしめた。

山本は驚きの表情を隠せない。

「離れろ!気持ち悪い!!」

そしてその日の夜のうちに、神隠しの島があるという高岡の地元へと、山本の運転で車を走らせた。

高岡の地元へは、山本の住んでいるアパートから車でおよそ3時間ほどの場所にある。

「やっと着いたな」

山本が船着場近くに車を止め、二人は静かに車から降りる。

時刻は深夜の2時。周囲は常闇に包まれていた。

「で、島まではどうやって行くんだよ」

「船を使う」

「船!?お前運転できんのかよ!てか、誰の船を使うんだよ!」

「船は地元の知り合いのを貸してもらう。運転は親父のを見てたからなんとなく分かる。たぶん」

「たぶんってなんだよ!本当に大丈夫なのか?」

「任せろ!泥船に乗ったつもりでいなさい!」

「沈むだろ。それ」

こうして二人は馬鹿話をしながら、半ば冒険気分で神隠しの島と呼ばれる無人島へと向かった。

これから二人を待ち受ける悲劇と恐怖も知らずに。


~中編へ続く~
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~ Comment ~

久々の小説!

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!
今回は久々の小説で、腕が鈍っていないか心配しながら書きました。

ちなみに、ここまでで1時間と少しで書き上げました。

簡単な流れは事前に考えていましたが、会話の内容や、それ以外の部分は完全に即興で書きました。

今回の小説も、かなり長くなりそうだったので、読み手の事を考慮しまして、急きょ前編・後編と分けることにしました。

後編は来週公開予定です。

ちなみに、ストーリーの流れとしてはもう固まっています。
お楽しみに!

こんにちは^^

私のブログにご訪問&コメントをしてくださってありがとうございました♪
毎日遊びに来させて頂いてはいたのですが、なかなかコメントをするタイミングがつかめなかったので助かりました。

久しぶりの小説とのことですが、続きが気になります。
様々なジャンルの文章をお書きになることが出来るようで、羨ましいです。

おはようございます!

(部活中なのに)泥船のとこでめっちゃ笑っちゃいました(笑)
後編がもの凄く楽しみです!!!!

NoTitle

続きがとっっっても気になります(´;Д;`)!!
こういう雰囲気の話大好きなので嬉しいです^^

後編楽しみに待ってまーす(^-^)/

あ、こえ部聞かせてもらったんですが
赤鈴さんめっちゃイケボですねー(*´ω`*)♫

お久しぶりです♪

小説書いているんですね♪
とっても読みやすく、楽しめました♪
後半読みにきますね★

麻莉さん、小次太郎さん、真侑さん、堕璃さんへ

麻莉さん、小次太郎さん、真侑さん、堕璃さんコメントありがとうございます!

そしてお返事が遅れてしまいまして、大変申し訳ございません・・・。



>>>麻莉さんへ
いつもご訪問ありがとうございます!

文章を書く、というか打つのは嫌いではないので、長い文書とかも平気で打っちゃいますね。

中学の頃に詩を書いてたりしたので、その影響もあるのかもしれません。

小説自体は、まだまだ素人当然なので、まだまだ至らない所だらけですが、少しでも皆さんを楽しませることができればと思っております。



>>>小次太郎さんへ
いつもコメント誠にありがとうございます!

泥船の部分はオチのつもりで書いてみました。
気に入っていただけたみたいでよかったです(*´∀`*)

後編は、ストーリーの流れとしてはだいたい固まっているので、後は頑張って書いていくだけです。



>>>真侑さんへ
イ、イケボだなんて・・・!
めちゃくちゃ嬉しいです!

自分ではそこまでイケボだとは思わないんですけどねw
むしろ、自分の声に自信がなくて、少しコンプレックスだったくらいで。

小説の方は、後編でとてつもない大事件が待っています。
結構エグいことになるかもです。

前編のほのぼのした感じが一変する展開となっております。



>>>堕璃さんへ
ありがとうございます!

私の小説は、読みやすいことを重視しています。
読み手が読むのに苦痛だと、本末転倒ですからね。
読み手あっての小説ですから。

これからも頑張って読みやすい小説を書いていこうと思います。

NoTitle

訪問&コメ
ありがとうございます!

小説おもしろいです*

えりかさんへ

えりかさん、コメント誠にありがとうございます!



> 訪問&コメ
> ありがとうございます!
>
> 小説おもしろいです*


ありがとうございます!

小説はまだ今年書き始めたばかりのペーペーなので、下手くそですが、下手なりに頑張って書いているつもりです。
いつか本当に小説とか書いて、本とか出したいなぁ~。なんて(笑)
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