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小説「35歳無職童貞引きこもり男が就職してみた【前編】」

小説「35歳無職童貞引きこもり男が就職してみた【前編】」

「宏!ご飯ここに置いとくからね」

母、千恵子の声が扉越しに聞こえた。

宏は電気の消えた暗闇の部屋から少しだけ扉を開けてご飯を部屋の中へと引きずりこんだ。

そして扉は静かに閉まり、また沈黙する。

暗闇に包まれた部屋の中ではどこからか漂うアンモニア臭とパソコンの起動音だけが空しく響いていた。

宏にとってはこの牢獄のような閉ざされた暗闇の部屋が世界の全てだった。

ここでしか生きられない。生きようがない。

そして誰からも愛されず、誰からも求められず。ただ生きるだけの日々を過ごしていた。

中学生の時にうけたクラスの酷いイジメが原因となって人間不信に陥ってしまい、そこから自分の中で何かが少しずつ壊れていった。

そんな宏が引きこもってから20年という歳月が流れていた。宏も35歳になろうとしていた。

時計の針が午前12時であることを知らせてくれる。

「もう俺も35になっちまったか。無駄に生きてきたな」

そう一人ポツリとつぶやいた。

すると下から誰かが階段を登ってくる気配がする。足音は宏の部屋の前で止まった。

「宏。お誕生日おめでとう!ケーキ買ってきたんだけど食べる?」

母、千恵子の声だ。宏は無言で答える。

「ここに置いとくからね」

そう寂しそうに言い残すと母、千恵子は階段を降りていった。

しばらくしてから宏は静かに扉を少し開け、ケーキを自分の部屋の中へと引きずりこんだ。

可愛らしい苺のショートケーキだ。

「俺35歳の誕生日おめでとう」

暗闇の中で一人そうつぶやくと宏は静かにショートケーキを食べ始めた。

「父さんが今の俺の姿を見たらきっと失望するだろうな」

宏は30年前に病気で他界した父、剛志の事を思い出しながらそうつぶやいた。

時刻は午前12時30分になろうとしていた。

「ただいま!」

下の玄関の方で妹、絵美の声がした。

母、千恵子が心配そうな面持ちで出迎える。

「おかえり。遅かったのね」

「うん。ちょっと仕事が長引いちゃって」

「ご飯は食べてきたの?」

「まだ。仕事終わってそのまま帰ってきたから」

絵美のお腹が鳴り響く。

「大変!ちょっと待っててね。すぐに何か作るから」

そう言うと母、千恵子は台所の方へと足早に戻っていった。

しばらくして、誰かが階段を登ってくる音が宏の耳に聞こえた。足跡は宏の部屋の前で止まった。

「兄貴いる?お誕生日おめでとう。誕生日プレゼント買ってきたんだけどさ、直接渡したいからちょっと出てきてくんない?」

絵美の声が扉越しに聞こえる。しかし宏はパソコンの前から動こうとはしない。

絵美の口からはため息が漏れた。

「そうやって閉じこもっていても何の解決にもならないよ。一生逃げ続けるつもりなの?ねぇ、聞こえてる?」

絵美は目の前の扉の向こう側にいる者にむかって問い続けた。

下からその声を聞きつけて母、千恵子が駆け上がってくる。

「どうしたの絵美。下にまで声が聞こえたわよ」

「母さんからも何か言ってよ!本当にこのままでいいと思ってるの?」

母、千恵子はただ黙っていた。絵美の目からは今にも涙が零れ落ちそうだった。

宏は手で耳を塞ぎ、部屋の隅でうずくまっていた。

「宏聞こえる?」

母、千恵子の声だ。

「母さん、宏が部屋から出てくるの信じて待ってるから。いつかまたあの頃みたいに三人で一緒にご飯食べようね」

その声はたしかに宏の耳に、心に届いていた。

「母さん・・・」

そうつぶやくと絵美はその場で泣き崩れた。

宏は扉の前で立ち尽くし、何もできずにいた。

そして朝が訪れた。母、千恵子は宏の部屋の前に来ていた。

「じゃあ母さんと絵美は仕事行ってくるからね。朝ご飯はここに置いとくから」

「兄貴いってきます」

そう言い残すと絵美と母、千恵子は出勤のため玄関へと向かう。

その時、階段の方から何かが転げ落ちるような大きな音が家中に鳴り響いた。

「母さん!しっかりして!!母さん!」

絵美が横たわる母、千恵子の体を揺らしながら必死に呼びかけ続ける。

母、千恵子の体は朝・晩の仕事と家事との両立でとっくに限界に達していた。

それでも頑張れたのは宏や絵美がいたからだった。

「母さん!!」

宏は部屋の扉に手をかけた。

しかし踏み出す勇気が持てず、なかなか扉を開けることができない。

その時母、千恵子のあの言葉が蘇った。

「こんな俺を母さんは信じてくれた!だから俺も・・・!」

宏の体を光が包み込む。こんなにまぶしい光を浴びたのは何年ぶりだろうか。

部屋の前には絵美からの誕生日プレゼントがプレゼント用に綺麗に包装されて置かれていた。

「ありがとう絵美、母さん」

そう小さくつぶやくと宏は絵美と母、千恵子の元へと急ぐのであった。


~中編へ続く~
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~ Comment ~

読んでくれた皆様ありがとうございます!

最後まで読んでくださいました皆様ありがとうございます!

今回も前回と同様、文章に関しては即興で書きました。
流れはだいたい予め考えてたんですけどね。

ちなみに創作時間は2時間30分くらいでした。
後編も鋭利構想中です。

お楽しみに!

こんばんは。

小説読ませていただきました。
現代社会ではよくある出来事ですが、家族はすごく大変だと思います。
続編は社会復帰してくれたらいいなぁ~と勝手に思っています。

松ハゲさんへ

松ハゲさんいつもご訪問&コメント誠にありがとうございます!


> 小説読ませていただきました。
> 現代社会ではよくある出来事ですが、家族はすごく大変だと思います。
> 続編は社会復帰してくれたらいいなぁ~と勝手に思っています。


たしかにそうですよね。
その当人への接し方やコミュニケーションのとり方1つとっても非常に難しいものだと思います。

後編では果たしてどうなるのか!
お楽しみに。

こんばんは^^

面白い小説ですね。
描写もとても丁寧で、一気に
読ませていただきました。

多感な年頃に、ショックな出来事があると、辛いでしょうね。。
色々と考えさせられるお話でした。
家族のあたたかさを凄く感じましたよ。
続き、楽しみにしていますね^^

NoTitle

続きがとても気になります!!!
お母さんどうなってしまうんでしょうか;

続き楽しみにしています(^O^)/

NoTitle

続きがとても気になります!!!
お母さんどうなってしまうんでしょうか;

続き楽しみにしています(^O^)/

NoTitle

実際、引きこもりを容認してくれている家庭が羨ましく思っていたか・・・

心療的病を認めない家庭に育ったので・・・

身体的障害すら容認してくれなかった家庭・・・

そんな家庭だったから、羨ましく思える。

ミコさん、真侑さん、miroroさんへ

ミコさん、真侑さん、miroroさんご訪問&コメント誠にありがとうございます!

>>>ミコさんへ
お褒めのお言葉ありがとうございます!
大変励みになります。

後編では主人公の宏が社会復帰に向けて奮闘していきます。
あんまり喋ってしまうとネタバレになるので言えませんが、色々構想中です。

お楽しみに!


>>>真侑さんへ
ご訪問&コメント誠にありがとうございます。

お母さんは果たしてどうなっちゃうのか・・・。
ハッピーエンドになるのか、それとも・・・。
とにもかくにも後編を楽しみにしていてください。

後編の更新は今のところ3/2(金)を予定しています。
皆さんの期待に応えられるよう頑張って書き上げたいと思います!


>>>miroroさんへ
ご訪問&コメント誠にありがとうございます。

こういった問題には必ず周りの家族や友人といった身近な人達の協力というのが必要不可欠になってきます。

かくいう私も中学の時に2年間不登校で半分引きこもりに近い生活を送ってましたが、周りの友人や家族の協力で脱することができました。

あの時は色々ありましたが、今の自分があるのも周りの人達のおかげだと思っています。

やはり人間1人では生きていけない。そう身を持って実感した中学生活でした。

こんばんは^ ^

今回の小説も、興味深く読ませていただきました。
こういう引きこもりを抱えた家族の描写って、負の方向(=良く思われていない、邪険に扱われている)に描かれている小説や漫画等が大部分を占めているように感じますが、それは子供が引きこもりになった原因と向き合っていなくて逃げているだけではないかと思っていました。
こんな優しい描写の小説が増えてくれれば、引きこもりに対する理解も増えると思います。
ちなみに私なら、親に言われるよりも兄弟(こちらでは妹ですね)に言われた方が、グッと来るかもしれないです。

後編も楽しみにお待ちしています!!

NoTitle

うわわ、どうなってくるんだろう?
楽しみです!

自分5年間ほど不登校だったんでちょっと興味を惹かれる内容です。
それにしてもやっぱり文章力すごいなぁ。
後編期待してますね^^

NoTitle

お~!!
いやー
凄い!!

僕も不登校になってましてね・・・・
中学二年生と言う大事な時なんですがね・・・
あんまし家族の理解が得られないんですよ・・・

う~ん
小説の主人公が望ましいな~
特に妹が兄思いなのが良いですね
お母さんどうなるんだろ?
楽しみにします~^^

もあ☆モアさん、うあうあ@さん、五目釣り少年さんへ

もあ☆モアさん、うあうあ@さん、五目釣り少年さんご訪問&コメント誠にありがとうございます!


>>>もあ☆モアさん
ご感想、そして貴重なご意見ありがとうございます。

たしかに他の小説や漫画とかではなぜか家族は引きこもっている身内を邪険に扱っているような描写が多いですね。

たしかに中にはそういった扱いをしてしまうような方もいらっしゃるかもしれませんが、皆が皆そういった人ばかりではなく中には優しく受け止めてくれる方もいらっしゃると私は思います。

ちなみに書く直前までは実は妹の出演予定はなかったんですが、思いつきで急きょ出演させてみました。

やっぱり兄弟の存在って大きいですよね。
出演させてみて正解でしたね。

後編は今週の金曜日に更新予定です!
お楽しみに。


>>>うあうあ@さんへ
暖かいお言葉ありがとうございます。
大変うれしく思います。

私もイジメが原因で2年間不登校でした。
あの時は学校に行くのが本当に辛くて最初のうちはそれこそ引きこもりみたいな感じでしたね。

今でこそだいぶマシになりましたが、その当時の私の性格の暗さといったらなかったですね。
今でこそよく笑うようになりましたが、その当時はお腹の底から笑える日なんてなかったですからね。

それでもここまでこれたのは家族と友人のおかげです。
本当に感謝してます。


>>>五目釣り少年さんへ
お褒めのお言葉ありがとうございます!
感謝感謝です。

私は中学1年生の二学期から中学3年の卒業式の当日まで教室には怖くて入れませんでした。

最初のうちは学校に行くのも嫌で、よく学校に行ったふりをしてサボってたもんです。(もちろんすぐにバレちゃいましたが(笑)
でも周りの友人や家族の協力もあって徐々にですが、学校に行けるようにはなって皆とは違う教室でしたが授業も受けれました。(個室みたいなとこで先生とワンツーマン

卒業式当日には友人の支えもあって教室にも行けました。
まさに2年半以上ぶりの教室でした。

あの時の感覚は今でも忘れません。
最後の最後で逆転満塁ホームランを打てたみたいな感じでしたね。

不登校にはやはり学校側と、そして家族や友人の協力というのが必要不可欠になってくると思います。

きっかけがあれば人はいつだって変われる。
私はそう思います。

長々と失礼致しました。

NoTitle

うぉーー!本格的って言えばいいんですか?
すごいですね。

僕は月5,6冊は小説を読んでいるので今時の中学生よりは結構読んでいる方だと思うのですが、描写の上手さが有名な小説となんら変わらないぐらい上手です!

続編に期待しております。

としやさんへ

としやさんご訪問&コメント誠にありがとうございます。


> うぉーー!本格的って言えばいいんですか?
> すごいですね。
>
> 僕は月5,6冊は小説を読んでいるので今時の中学生よりは結構読んでいる方だと思うのですが、描写の上手さが有名な小説となんら変わらないぐらい上手です!
>
> 続編に期待しております。


身に余るお言葉ありがとうございます。
光栄です。

小説の描き方は東野圭吾さんの小説を念入りに拝見して勉強させていただきました。
有名な作家さんとかに比べればまだまだヒヨっ子も当然ですが、少しでも近づけるようにこれからも頑張って描いていこうと思います。

ちなみに次と次の次のタイトルもすでに考えてあります。

今回の後編も鋭利構想中ですのでお楽しみに!

NoTitle

こんにちは。yuukiです。

コメント遅れてすいません…^^;

今、前編を読ませてもらいました!

やはり、赤鈴さんの小説は、
文章がしっかりしていて読みやすいです!

最近新しい小説を書き始めたのですが、
その内容が若干赤鈴さんのとかぶってしまっていることに
気づきました^^;申し訳ない…

決して赤鈴さんの小説をパクったわけではないので、
ご了承ください…

中編も、さっそく読ませていただきます!

yuukiさんへ

yuukiさんいつもご訪問&コメントありがとうございます!

私の方こそコメントのお返事遅れまして申し訳ございませんでした^^:
PCが壊れてしまって修理に出していたので今初めてコメント読ませていただいております。

お褒めのお言葉ありがとうございます!
大変励みになります。

yuukiさんの新しい小説が私の今回の小説と若干かぶっているという事ですが、私は全然気にしてませんので思う存分書いちゃってください。

むしろ私の方がかぶってしまって申し訳ないです・・・。
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