
小説「壊れゆく者たち 第2夜」
太陽の暖かい陽射しが智子の部屋のカーテンを明るく照らし出す。智子の携帯のアラーム音が朝の静けさを打ち破り、騒々しく鳴り出した。ゆっくりと目蓋(まぶた)を開け、騒ぎ続ける携帯のアラーム音を黙らせた。再び、部屋が静寂に包まれる。数分ほど余韻に浸った後、ゆっくりと起き上がった。何かを捜すかのように、智子は辺りを見渡した。すると、部屋の中央にあるガラステーブルの上にB8ほどの大きさの白い紙が置いてあることに...
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小説「壊れゆく者たち 第1夜」
「智子、ランチ行こうよ」「うん、ちょっと待って」ある日の昼下がり、智子と恵子は持参の弁当を片手に近くの公園へと向かった。公園に到着するとベンチに腰かけ、昼食をとる。空は青く澄みきり、太陽はがむしゃらに光を地上へと降り注いでいた。季節は春、公園は桜で辺り一面ピンク色に染め上がっていた。「桜、綺麗だね」「うん、女二人で見るにはもったいないね」「たしかに」恵子は思わず苦笑いを浮かべる。「でも、智子には"...
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小説「無人島レストラン(後編)」
山本と神部の間に、永遠にも感じる沈黙が流れていた。最初に沈黙を破ったのは神部だった。「そういえば、彼が面白い事を言ってましたね。”お父さんを捜しているんだ”って。写真を見せてもらったら、知っている方でしたよ」「あんた、まさか高岡の親父の事を知っているのか!?」「えぇ。よく存じてますよ。だって私なんですから、その人を殺したのは」「なん・・だって!?」神部は淡々とした口調で語り始めた。「食材としては賞味期限ぎり...
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