

小説「無人島レストラン(後編)」
山本と神部の間に、永遠にも感じる沈黙が流れていた。最初に沈黙を破ったのは神部だった。「そういえば、彼が面白い事を言ってましたね。”お父さんを捜しているんだ”って。写真を見せてもらったら、知っている方でしたよ」「あんた、まさか高岡の親父の事を知っているのか!?」「えぇ。よく存じてますよ。だって私なんですから、その人を殺したのは」「なん・・だって!?」神部は淡々とした口調で語り始めた。「食材としては賞味期限ぎり...
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小説「35歳無職童貞引きこもり男が就職してみた【後編】」
宏は面接会場で妹、絵美から教わった面接時のマナーを思いだしていた。宏の他に数人の男女が面接に訪れている。お世辞にも大きいとはいえない小さな会社だ。一人、また一人と呼ばれていく。自分の番が近づくにつれて緊張はどんどん高まっていく。そしてついに次は宏の番だ。宏はこの時ほど神仏に助けを求めた事はなかった。「次の方どうぞ」男性の低い声で呼ばれる。宏は体をガタガタ震わせながら扉の前まで歩を進めた。震える拳で目...
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小説「おばあさんの温もり(後編)」
遠くの方で救急車のサイレンが聞こえ始めた。どんどんこちらへ近づいているようだ。しばらくすると救急車が到着し、救急隊員達が慌しく動き始める。川口は今だに目の前で起きている出来事が現実だとは思えずにいた。何かの拍子で目が覚めてまたいつもと何ら変わりのない日々が始まるのではないか。そう思わずにはいられなかった。でも目の前では現実におばあさんが倒れ、そしてストレッチャーで救急車の中へと運び込まれようとして...
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