

小説「無人島レストラン(後編)」
山本と神部の間に、永遠にも感じる沈黙が流れていた。最初に沈黙を破ったのは神部だった。「そういえば、彼が面白い事を言ってましたね。”お父さんを捜しているんだ”って。写真を見せてもらったら、知っている方でしたよ」「あんた、まさか高岡の親父の事を知っているのか!?」「えぇ。よく存じてますよ。だって私なんですから、その人を殺したのは」「なん・・だって!?」神部は淡々とした口調で語り始めた。「食材としては賞味期限ぎり...
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小説「無人島レストラン(中編)」
高岡の地元から船で1時間、二人は”神隠しの島”と呼ばれている無人島へと到着した。時刻は深夜3時。周りは常闇に包まれている。さすがに無人島と呼ばれるだけあって、人の気配は微塵も感じない。先の見えない深い森が二人を出迎える。生い茂る木々達が不気味な表情を覗かせる。思ったよりも島の面積は広い。1周するだけでも、数日はかかりそうだ。「よし、二手に分かれよう」そう言い出したのは高岡だった。「二手に分かれるって、何か...
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小説「無人島レストラン(前編)」
「暇だなぁ」そう言うと、高岡は大きな欠伸を漏らした。「夏休みで大学も休みだしな」山本がめんどくさそうに答える。「折角の夏休みだしさ、二人でどこか行かねぇ?」「”どこか”ってどこだよ。だいたい今からじゃどこも人でいっぱいだろ。疲れるだけだっての」少し間をおいた後に、高岡がなにかを思い出したかのように喋りだす。「お前さ、”神隠しの島”って知ってるか?」「神隠し?」「あぁ、地元の人間なら絶対に近づかない、結構大きな無人...
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ホラー小説「忘れ傘」
【Pixiv 2012年上半期 オリ小GA 短編部門 次点受賞作品】「やべぇ!降ってきたか」時刻は夜の9時、外はすでにどしゃ降りの雨。「どうすっかなぁ・・・傘持ってきてないしなぁ」途方に暮れる正幸。ふと会社の傘立てに1本の白い傘が置いてあるのに正幸は気がついた。少し古い傘だがまだ使えそうだ。首をかしげながら正幸はポツリとつぶやいた。「おかしいなぁ。会社にはもう誰もいないはずなのに・・・。誰かが忘れてったのか?」少し悩ん...
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小説「35歳無職童貞引きこもり男が就職してみた【後編】」
宏は面接会場で妹、絵美から教わった面接時のマナーを思いだしていた。宏の他に数人の男女が面接に訪れている。お世辞にも大きいとはいえない小さな会社だ。一人、また一人と呼ばれていく。自分の番が近づくにつれて緊張はどんどん高まっていく。そしてついに次は宏の番だ。宏はこの時ほど神仏に助けを求めた事はなかった。「次の方どうぞ」男性の低い声で呼ばれる。宏は体をガタガタ震わせながら扉の前まで歩を進めた。震える拳で目...
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