

小説「無人島レストラン(前編)」
「暇だなぁ」そう言うと、高岡は大きな欠伸を漏らした。「夏休みで大学も休みだしな」山本がめんどくさそうに答える。「折角の夏休みだしさ、二人でどこか行かねぇ?」「”どこか”ってどこだよ。だいたい今からじゃどこも人でいっぱいだろ。疲れるだけだっての」少し間をおいた後に、高岡がなにかを思い出したかのように喋りだす。「お前さ、”神隠しの島”って知ってるか?」「神隠し?」「あぁ、地元の人間なら絶対に近づかない、結構大きな無人...
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ホラー小説「忘れ傘」
【Pixiv 2012年上半期 オリ小GA 短編部門 次点受賞作品】「やべぇ!降ってきたか」時刻は夜の9時、外はすでにどしゃ降りの雨。「どうすっかなぁ・・・傘持ってきてないしなぁ」途方に暮れる正幸。ふと会社の傘立てに1本の白い傘が置いてあるのに正幸は気がついた。少し古い傘だがまだ使えそうだ。首をかしげながら正幸はポツリとつぶやいた。「おかしいなぁ。会社にはもう誰もいないはずなのに・・・。誰かが忘れてったのか?」少し悩ん...
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小説「おばあさんの温もり(後編)」
遠くの方で救急車のサイレンが聞こえ始めた。どんどんこちらへ近づいているようだ。しばらくすると救急車が到着し、救急隊員達が慌しく動き始める。川口は今だに目の前で起きている出来事が現実だとは思えずにいた。何かの拍子で目が覚めてまたいつもと何ら変わりのない日々が始まるのではないか。そう思わずにはいられなかった。でも目の前では現実におばあさんが倒れ、そしてストレッチャーで救急車の中へと運び込まれようとして...
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人生初の小説「おばあさんの温もり(前編)」
今日もいつもと何1つ変わらない、変われない一日が始まった。朝起きて、朝飯食って、歯を磨いて、トイレに行って、出勤する。アルバイト先のスーパーに向かって川口は自転車を走らせる。季節は冬、風がひんやりと冷たい。店に到着し着替えが終わり事務所へ行くと店長の姿があった。「おはようございます」「川口君おはよう。品出し頼むぞ」「分かりました」なんとも愛想の欠片もない会話だ。そう思いながらも川口は品出しのため店内へと...
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